寒さの厳しい山梨でもあたたかく暮らせる断熱工法と窓の選び方
「暖かい家が欲しい!」
山梨で注文住宅を建てられる方は、皆さん、そう口にされるといっても過言ではありません。
ご存じの通り、山梨の甲府盆地は寒暖の差が大きく、夏は暑く冬は寒いという特徴があります。
夏の暑さも相当に参ってしまいますが、冬の寒さの厳しさはとてもつらいですよね。
もちろん北海道、東北、信越などや、豪雪地帯にお住まいの方は大変だと思いますが、山梨もまた、寒さ対策ということに関心が高い地域なのです。
家の外には北風が吹きすさんでいても、家のなかはぽかぽかと暖かい。
暖かい家は、まさに幸せの象徴です。
そんなことから、多くの方が「あたたかい家」を望むのでしょう。
では、どうやってあたたかい家を建てればいいのか。
家づくりに携わる私たち工務店が、それは、つねに念頭に置いている課題です。
外断熱と内断熱、どちらがあたたかい?
「あたたかい家」づくりに欠かせないポイントは何でしょうか。
それは、外の冷気をいかに遮断して、家の中のあたたかさを逃がさないようにするかということです。
冬の寒さは、家の壁や天井、床を外側から冷やし、じわじわと室内に忍び込んできます。
家の中に冷気を遮断して入れない方法のひとつは、壁・天井・床に断熱材を使用することです。
断熱には、断熱材を壁の外側に張る「外断熱」と、壁の中に断熱材を入れる「内断熱」の2種類があります。
外断熱を採用している工務店は外断熱のほうがいいと説明し、内断熱を採用している工務店は内断熱のほうがいいと説明するでしょう。
これでは、建築のことをあまりご存じない一般の方にとっては、混乱してしまうばかりです。
「外断熱のほうがあたたかいんですよね?」
テレビコマーシャルの影響でしょうか、最近では、一般の方も、そんなふうに質問される方が多いように思います。
実際には、どちらがあたたかいのでしょうか?
壁・天井・床の断熱性能は、材質と厚みで決まります。
これを数値で表したものが「熱抵抗値」です。
熱抵抗値の数値が大きいほど、断熱性がいいことになります。
壁の場合、外断熱工法では熱抵抗値は1.7。
内断熱工法で同じ断熱効果を得るためには、2.2の熱抵抗値が必要になります。
外断熱のほうがあたたかいと言われる根拠は、そこにあるのでしょう。
あたたかい家を建てるには、内断熱の場合で、以下のような熱抵抗値を出せればいいと思います。
壁の熱抵抗値 | 2.6以上 |
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天井の熱抵抗値 | 5.2以上 |
床の熱抵抗値 | 2.2以上 |
工務店の担当者に「熱抵抗値」を聞いてみよう
ちなみに、注文住宅を建てることを工務店に相談するときには、断熱材の種類や厚みだけを聞くのではなく、必ず、壁・天井・床の熱抵抗値を質問してみましょう。
上記に掲げた数値以上であれば、断熱材の基準は満たしていることになります。
私たちからすると、とても信じられないような話ですが、専門家を名乗っておきながら、熱抵抗値の意味すら知らない業者も、中にはいるそうです。
こういう質問をすれば、最低限の知識がある工務店かどうかを判断できますので、ぜひ質問を試してみてくださいね。
もし、「熱抵抗値」を即答できないような担当者だったら、その工務店であたたかい家を建てることは無理だと判断したほうがいいかもしれません。
では、今度はコスト面で比べてみましょう。
じつは、外断熱工法で熱抵抗値1.7にする費用に対して、内断熱工法では、その半分以下ほどの金額で、熱抵抗値2.2を得ることができるのです。
なぜなら、日本では、断熱の主流は内断熱で、内断熱用の断熱材のほうがたくさん流通しているので、内断熱用の断熱材のほうが安価に購入できるからなのです。
コストを基準として決めるのか、それとも、コストは度外視して決めるのか。
よく考えておくことが大切です。
私なら、「コストが安くすんであたたかい家」である内断熱を選びます。
窓の大きさとあたたかさの関係
「大きな窓をつけて、室内から外の景色を楽しみたい」
そう考えられる人は多いと思います。
大きな窓があると部屋の中が明るく、開放感がありますので、とても素敵ですね。
自分の家を建てるのなら、ぜひ大きな窓を、という憧れをもっていらっしゃる方も多いと思います。
でも、寒さ対策ということから考えると、断熱性能の面からは、大きな窓にはちょっと問題があります。
一般的に使われるアルミサッシのペアガラスでは、熱抵抗値はわずか0.22。
これでは、壁の1/12程度しか断熱性能がありません。
断熱性能を高めた「アルミ樹脂複合サッシLOW-Eペアガラス」を使えば、熱抵抗値は0.43、壁の1/6程度の断熱性能です。
サッシを変えることによって、これだけ断熱性能が変わるわけですが、それにもかかわらず、工務店の営業の現場では、すべて「あたたかい断熱サッシ」などと説明されることが多いようです。
あたたかい家を安く建てたいのなら、「アルミ樹脂複合サッシLOW-Eペアガラス」のほうを選びましょう。
通常のアルミサッシペアガラスと比べると、金額は1割程度アップしてしまいますが、断熱性能で比べれば、その差は2倍もあるのです。
でも、「アルミ樹脂複合サッシLOW-Eペアガラス」を使っても、窓は壁に比べてずっと断熱性能が下がってしまいます。
寒さの遮断という面からみると、窓というものは壁に穴があいているようなものなのです。
ですから、「あたたかい家」を建てるなら、窓の開口率はできるだけ下げる必要があります。
開口率とは、窓や玄関ドアのような開口部の面積を、床面積で割った数値のことです。このとき、吹き抜けも床面積として計算します。
あたたかさだけを考えれば、「アルミ樹脂複合サッシLOW-Eペアガラス」を使用した場合でも、開口率は15パーセント以下が望ましいことになります。
でも、明るさのことも考えれば、やはり30パーセントほどの開口部は欲しいところです。
気持ちのいい風が吹き抜ける家
当たり前のことですが、家は、冬だけのことを考えて建てるものではありません。
春夏秋冬、どの季節でも、快適に暮らせなければ意味がありません。
でも、「夏が涼しい」「冬でもあたたかい」など、夏と冬がすべてであるかのようなセールストークが多いと思いませんか?
春も秋は、自然の風が家の中を通りぬけて、とても気持ちがいい季節ですよね。
そんな家に住みたいと、誰もが思うはずです。
あなたは、あたたかさのために開放感を犠牲にしますか?
あたたかさのために、風の通りぬけを犠牲にしますか?
窓が小さくても、部屋の明かるさや開放感、風の通りぬける道を確保する方法があります。
高い位置に窓をつければ、小さい窓でも、室内は意外と明るくなります。
トップライト(天窓)の設置なども効果的です。
また、リビングのソファーに座ったとき、キッチンに立ったときなど、日常的な視線の高さに合わせて窓を配置することによっても、解放感を得ることができます。
窓には風を通すという役割もあります。
無風だってあるじゃないか、と思われるかもしれませんが、じつはそんなことはなくて、空気というものは温度の差によって流れていく性質があるので、それを利用すれば、無風状態であっても、風を作り出すことができるのです。
たとえば、家の南側と北側をくらべれば、北側のほうが外気温は低いはずです。
また、家の中でも、天井に近い上の部分より、床面に近い部分のほうが温度は低くなります。
こうした南北の気温差、床と天井の気温差をうまく利用すれば、風は気持ちよく家の中を通りぬけていくのです。
具体的には、ひとつの部屋に対して、2つ以上の窓を、できるだけ離れた対角線上につけ、風が入るほうの窓は温度の低い側に小さく、風を出す窓は温度の高い側につければ、効果的です。
このように、風通しのいい場所を見きわめて窓を設置すれば、小ぶりでも十分な換気が可能です。
新鮮な空気をとりこみ、湿気を取り除いて、気持ちよく暮らせる、そんな家にあなたも住んでみたくありませんか。