家族が幸せになれる資金計画はこうして立てる
成功する家づくりの順番は、
- 資金計画(土地+建物+その他の費用)を立てる
- いい工務店をパートナーに選び、家づくりのプランを立てる
- 土地を選び、購入する
という進め方です。
この資金計画は、住宅ローンの返済だけでなく、新しい家での生活資金、とりわけ、お子さんの学費を考慮に入れて計算しなくてはなりません。
ご夫婦でしっかりと話し合ってください。
あなたに適した返済額はいくら?
今の年収でどれくらいのローンが組めるのか、最近では、すぐに数字を割り出せるようになりました。
住宅ローンシミュレーション | リクルートの不動産・住宅サイト SUUMO(スーモ)
返済率 = 年間ローン返済額 ÷ 税込み収入
これが返済率を割り出す際の公式です。
返済率とは、「いまの収入に対してどれだけのローンを組めるか」を決める目安です。
これで割り出すと、金融機関によって多少差がありますが、おおむね、次のようになります。
年収300万円未満 | 返済率25%以下 |
年収300~400万円未満 | 返済率30%以下 |
年収400~700万円未満 | 返済率35%以下 |
年収700万円以上 | 返済率40%以下 |
ただし、この「年収」というのが曲者です。これには、所得税、住民税、社会保険、交通費、厚生年金などが含まれています。つまり、手取りの収入金額ではありません。
この公式で出る数値を実際の手取りで考えると、返済率がなんと50%を超えてしまうこともあります。50%ということは、手取り収入の半分以上をローンの返済でもっていかれてしまうことになります。それでは、生活にゆとりなどつくれるわけがありません。
返済率からローンの額を決めるのであれば、年収の20%以下が理想的です。多くても、25%を超えないようにしたいものです。
20%を超えると、だんだん生活は苦しくなってきます。
逆に、月々の返済額を今の生活から考えて決めるのでもいいでしょう。
もし、今、月7万円の家賃を払っていて、毎月2万円を貯金しているとしましょう。その今の生活を「幸せ」「ゆとりがある」と感じているのなら、住宅ローンの返済は7万円でもいいでしょう。最高でも、貯金するお金を合わせた9万円が限界になります。
しかし、今の生活が節約続きで大変だという感覚が少しでもあるなら、住宅ローンは7万円以下に抑えるべきです。
この先、お子様が成長するにしたがって、学費や食費なども増えていきます。将来にかかる生活費も、ある程度見込んでおかなくてはなりません。
様々なことを考慮して、返済額は余裕をもって決めるようにしてください。
「これだけ借りられますよ」の罠にはご注意!
「失礼ですが、年収はおいくらですか?それでしたら、住宅ローンはこれだけ借りられますよ」
工務店でも、銀行でも、住宅ローンは年収から逆算します。
でも、ちょっと待ってください。
銀行はお金を貸して、その利子を払ってもらうのが商売ですし、工務店は、高い家を売ったほうが儲かります。
つまり、どちらの場合でも、年収で借りられる限度いっぱいの金額を勧めてくるという傾向があるのです。
借りられる限度ぎりぎりのローンを組んで、豪華な家を建てたとして、はたして幸せになれるでしょうか?
新しい家のために、家具を新しく買いたい。とりあえず、引っ越す前から使っていた家具を置いているけれど、家が新しい分、なんだかよけいにみすぼらしく見えてしまう……。
一戸建てに引っ越したら、念願の犬を飼いたいという予定で、子どもも楽しみにしていたのに、買おうと思っていた犬種が高くて、とても買えそうにない……。
これでは、ちっとも「幸せ」ではないと思いませんか?
もし、予算を決める前に、工務店で「欲しい家」の目星をつけていたとします。本来は資金計画を立ててから、具体的な家づくりの検討に入るべきなのですが、気分を盛り上げるために、見学会やモデルルームを見て回ってしまうようなこともあるかもしれません。
まだ資金計画を立てていないのですから、自然と目は豪華な住宅のほうにいってしまいます。
そこへきて、工務店の営業マンが、
「大丈夫です!なんとかがんばって、これだけ住宅ローンを通しました!」
と言ってくれたら、パーッとうれしくなってしまうかもしれませんね。
「本当ですか?やったあ、あの家が手に入るんだ!どうもありがとうございます!」
その営業マンに感謝までしてしまうかもしれません。
ところが、そうやって組んだぎりぎりのローンのために、家が完成してから、わずか2か月で 支払いができなくなってしまった——そんな悲惨な例もあるのです。もちろん、その方は家を手放さざるを得ませんでした。そして、手元に残ったのは、多額の借金だけだったのです。
私たちに言わせれば、
「なんとかローンを通しました!」
という営業マンの言葉は、まさに、「あなたは破産しますよ」と言っているのと等しいのです。
資金計画には、くれぐれも気をつけてくださいね。
「幸せになれること」が家づくりの条件
当相談室に相談に来られたこんなお客様があります。
そのお客様は、あちこちの工務店を回られて、
「大丈夫です。ぜひ契約しましょう!」
と言われ続けていたそうです。
ですが、詳しくお話を聞いてみると、私たちには、そのお客様の資金計画では、どうしても幸せな生活を送ることはできないだろうと思えました。そこで、
「今は、家を建てる時期ではないと思います」
と率直にお話ししたのです。
この方の場合、年収は300万円ほどでした。その金額でも、収入が安定していれば、「幸せになれる家」を建てることはできます。
でも、そのお客様の収入は不安定で、かなり生活を切りつめないと、住宅ローンの返済が追いつかないという経済状態でした。
「家を建てるのは、少し待ちませんか」
思いきって、そう切り出しました。
「今、家を建てても、私たちが考える幸せな暮らしにはならないと思うのです。半年たったら、もう一度いらしてください。経済状態が好転していようなら、そのときにもう一度相談に乗らせていただきます」
そのお客様は、ほっとされたような顔になって言いました。
「大丈夫」には何の保証もない
それにしても、銀行にせよ、工務店にせよ、どうして「返せないかもしれない」ような人、ひどい場合は破産してしまうかもしれない人にまで、「大丈夫、大丈夫」と住宅ローンを勧めてくるのでしょうか。
貸したお金が返ってこなくなるかもしれないという心配はしていないのでしょうか。
実は、それがないから、銀行も工務店も熱心にローンを勧めるのです。
無理なローンを押しつけても、工務店や銀行は何ひとつ損をしない仕組みになっています。
工務店は、家の引き渡しの時点で、建築にかかった費用全額をお客様から払ってもらいます。相手がその費用をもっていなければ、誰か(銀行)から借りて払ってもらいます。ですから、その借りたお金の返済が滞ったとしても、たとえ返済することができなかったとしても、痛くもかゆくもありません。
また、銀行のほうも、保証協会からお金をもらうので、自分が貸したお金が返ってこなくても、やはり損はしません。
ローン返済ができなくなったとき、被害をこうむるのは借りた本人、つまりお客様だけなのです。
ローンが返済できないということになると、最悪、自己破産に追い込まれ、家族もばらばらになってしまうかもしれません。
そのときになって、「大丈夫だと言ったじゃないか」と言っても、何の意味もないのです。
変動金利を勧める工務店に注意
住宅ローンはどのくらいの種類があるか、ご存じですか?
なんと、その数は数千種!
自営業の方には自営業に最適なローンがあり、公務員や、大企業にお勤めの方にはまた別なローンがあります。
その膨大なローンの中から自分に合ったものを選ばなくてはならないのですが、素人にはそうそう簡単なことではありません。
工務店選びが重要な理由のひとつが、この住宅ローン選びにあるのです。
お施主様の身になり、最もメリットのあるローンを勧めてくれる工務店、余裕のあるローン計画を立ててくれる工務店を選ぶことが大切です。
ローンの検討を始めると、「金利」という問題にぶつかることと思います。変動金利と固定金利、どっちが得なの?と途方に暮れる方も多いことでしょう。
固定金利はローンの返済額がずっと同じで、変動金利はその時々の金利によって返済額が変動するというものです。
今は、ゼロ金利と言われていることもあり、変動金利のほうが得をするかのように言われています。しかし、変動金利は、もし金利が上がってしまうと返済期間が延びてしまい、その分、お客様の負担が増えることになります。
多くの業者は、金利が安い今、変動金利を勧めてくるでしょう。金利が低いことによって、ローンの負担が軽いように錯覚してしまう人が多いからです。つまり、変動金利というのは、売り手側に有利なローンなのです。
どのローンを勧めてくるか、ということは、いい工務店を選ぶための判断基準としても使えます。変動金利のほうがいい、と勧めてくるような工務店なら、お客様よりも自分たちのもうけを大事にしていると疑っていいでしょう。
私たちは、基本的には、長期の固定金利をお勧めしています。
将来的にも返済金額が変わらないので、金利上昇の心配がなく、予定を立てやすいからです。
変動金利を選ぶ場合には、そのリスクを減らすこんな方法を取り入れてください。
現時点の変動金利と固定金利の金利差を調べてください。その差から生まれた金額を、使わずに貯金しておくのです。
そうしておけば、将来、金利が上昇して月々の返済が増えてしまっても、その貯金で返済額を補填することができます。その貯金があれば、金利が急上昇しても、あわてずに対応できるというわけです。
もし、このまま金利が上がらなかった場合には、その貯金は丸々残ります。
このように、変動金利を選ぶ場合も、長期固定金利を選んだ場合の金利と同じつもりで資金計画を立てておけば、安心です。
住宅ローンが組めないとき
住宅ローンが組めない、ということがわかってあわててしまうこともあります。
自動車ローンを返済中だと、住宅ローンが組めないことがあります。住宅ローンを組む前に、必ず自動車ローンを返済しておきましょう。
そのほか、クレジットカードでのキャッシングや、銀行のカードローンなどは利用していませんか?消費者金融からの借り入れがあると、ローンを組むことはかなり難しくなってしまいます。
クレジットを作りすぎてしまうと、たとえそれらを使っていなかったとしても、住宅ローンが組めないというケースもあります。
消費者金融のカードをもっていると、まったく利用していなくても、使う可能性があるとみなされて、あなたの信用度が落ちてしまうことがあります。
カードは、友人や知人から頼まれてなんとなく作ってしまうこともあると思います。
不要なクレジットカードは作らないようにしましょう。
資金計画を立てると、家を見る目が変わります
家族が幸せになれる家を建てるためには、いくらの予算が必要なのか。
この点がはっきりすれば、自分たち家族にとっての「等身大の家」の姿が、ようやく見えてくるでしょう。
たとえば、1,500万円の家、2,500万円の家、3,000万円の家という3軒があるとします。
資金計画を立てずにこの3軒の家を見比べると、お客様は、「やっぱり高いのは、それだけのことはあるね」などと言いながら、3,000万円の家をいい家だと思ってしまうでしょう。
でも、最初に「幸せになれる家」に必要な予算がわかっていると、家の見方が変わってきます。
幸せになれる予算は2,500万円だったとしましょう。
これを1万円でも超えたら、不幸になってしまう資金計画だったとします。
2,500万円のうち、建物にかけられる費用は1,700万円。残りの800万円で、土地とその他雑費を支払うことになります。
ここまではっきりとわかっていれば、1,500万円の家が、不思議と「いい家」に変わってしまうのです。「ここまでできて、しかも200万円もお釣りがくる」というわけです。
最初はいいと思っていた2,500万円の家は、「こんな家、とてもじゃないけど建てられない」という印象に変わります。
そして「一番いい」と思っていた3,000万円の家にいたっては、「こんなの高すぎる」と、まったく魅力のない、かえって、自分たちにとっては「悪い家」になってしまうのです。
不思議に思われるかもしれませんが、このように金額的な基準を先に決めることで、結果はまったく逆になるということを、ぜひ覚えておいてください。
家族が幸せになれる資金計画はこうして立てよう まとめ
資金計画を立てたら、次はいよいよ工務店を決める段階に移ります。
幸せになれる家づくりは、どんな工務店をパートナーとして選ぶべきか、ということは大変重要な問題です。長い人生の中でいえば、結婚する相手を選ぶのと同じくらい大切なことだと言えるでしょう。
今回紹介したように、
- 家を建てても、幸せに暮らせる資金計画のアドバイスをくれる工務店
- 無理のない範囲で返済できるローンを勧めてくれる工務店
こんな工務店になら、「幸せになれる家づくり」を託してもいいでしょう。
資金計画は、一人で立てられるものではありません。
建築や住宅ローンに関する知識をもつ工務店の専門家の手助けが必要になります。
資金計画や見積を工務店に出してもらい、その対応の仕方で、ベストな工務店を選んでいきましょう。